2010年01月03日

本>自然・科学 「恐竜はなぜ鳥に進化したのか」 作:ピーター・D・ウォード

今年の2ネタ目としてこれを、
「恐竜はなぜ鳥に進化したのか」−絶滅も進化も酸素濃度が決めた−,作:ピーター・D・ウォード,文芸春秋です。
一つ前の、「ワンダフル・ライフ」と同じく、生物進化ものです。

今、現生している生物の中で、酸素をもっとも効率的に取り込む機構を持っているのは鳥類です。
そしてその呼吸機構である、”気嚢システム”を持っているのが今の生物では鳥類で、それは恐竜から引き継がれたものなのだそうです。

この気嚢システムというのは、我々が持っている肺の機能の改良版のような感じの機能と構造で、
より大気中の酸素を効率的に取り込むことが出来るものだそうです。
それゆえに、渡り鳥などは、人間では歩くことすらままならない様な高度でも、飛行という恐ろしくエネルギーを消費する
活動を行なうことが出来るとのこと。

で、この作品では、そういうところから更に拡大して、生物が生まれてから、哺乳類が主役となっている白亜紀以後くらいまでの生物の進化とその興隆,絶滅を環境中の酸素濃度の変化とそれを如何に体内に取り込むか?そのボディーデザインが大きな要因をなしていたという論調で生物進化全体を俯瞰しようという作品になっています。

非常に興味深いし、面白い内容でした。 一読する価値は十分にある作品です。
ただこれも、ちょっと注意点を書いておきたいと思えるところがあります。
この作家さんは、”酸素濃度”という一点に着目し、それが生物の興隆に与えた影響を記述されているわけですが、それを重視しすぎていて、全ての生物の進化、興隆がその一点のみで左右されたかの如く書いておられる所があり、その辺りはあまり引きずられないように注意が必要と思いました。

確かに大きな影響を与える因子であるのは確かなように思えましたが、ただそれのみで生物の進化や興隆が
決定付けられるものでは無いように私には思えました。
単純に一言では言えない、複雑な要因が絡まりあって、興隆が起こってきたと言う所ではないのか?と思います。

この作品は、非常に長い時間的スパンでの生物進化を扱っているので、これを読むと、人類の歴史というのは本当に生物の歴史の中のほんの一瞬に過ぎないと改めて思います。
今、人類は、地球上で一番影響力がある生物種でありますが、地球全体の歴史の中では、計測することが難しいほどに僅かな期間生存しているにすぎません。
私が生きている間に人類が絶滅するのは、大規模な戦争を除くと余り可能性が無いように思いますが、地球全体の歴史の中で大きな存在となるかどうかなんて誰にも確かなことは言えないだろうなぁと、この作品を読んで思いました。
恐竜などのように、地球の歴史の中である程度の期間存在していたという存在に人間はなるのでしょうかね??
今人類が滅んでしまったとして、化石が残ったとしても、ほんの一瞬のあだ花のような存在ということになるような気がします。

なんとなく、色々な悪条件が発生しても、科学の力や、人類の英知的なものが駆使されて、人類は生き延びる、またはますます発展していくと何となく思っているように思います。 SF小説や、ドラマの影響でしょうね・・・
でも冷静に、または冷笑的に考えるならば、何億年か先に地球の地層を発掘した存在があったとしたら、
”ちょっとの間、ひどくこのホモサピエンスと言う生物が増殖したんだなぁ・・・”と言われるだけの存在かもしれません。
(というか、その可能性のほうが高いのではないかと思います)

なんだかんだで色々なことを考えさせてくれたという点も含めて、なかなかいい作品でした、これもお薦めです。
単行本で買ったので、2200円くらいした本で、こういう本で内容的に面白くないと、非常にショックが大きいのですが、
これは買った甲斐がありました。


posted by 大阪下町オヤジ at 01:59| Comment(0) | TrackBack(1) | 本の雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月01日

本>自然・科学 「ワンダフル・ライフ」 作:スティーヴン・ジェイ・グルード

え〜〜、長らく記事を投稿していませんでした、、、ネタが無かったわけではなかったのですが、なんとなく後回しにする癖がつき、”今日もええか・・”ということが続いてしまい、結局長期にわたって投稿が滞ってしまいました。
年が変わったことをきっかけに、投稿を再開すべくこの記事を書いております。
今年はこの決意が持続して、コンスタントに投稿できればいいのですが・・・

では、ここから本題です。 今年の最初のネタはこれにしました。
「ワンダフル・ライフ」−バージェス頁岩と生物進化の物語−,作:スティーヴン・ジェイ・グルード,ハヤカワ文庫NFです。

これは、ずいぶん話題になった本なので、読んだ事がある方も多いと思います。
単行本で結構昔に出て、かなり本屋で平積みされていた記憶があります。
去年末、文庫で出ているのを見て購入しました。

この本の内容は、副題のとおり、バージェス頁岩から発見された化石群の、発見当時の見解を覆し、”カンブリア紀の爆発”と呼ばれる、地球の生物史上、その生物種が爆発的に増加(現在の生物種の体構造(ボディーデザイン)がほぼ出揃ったといわれている)がどのような作業の蓄積によりなされたかを、豊富な図とイラストでイメージ豊かに紹介している、ノンフィクションであり科学エッセイでもあるという作品。
NHKのドキュメンタリー番組でこの”カンブリア紀の爆発”が取り上げられたのをご記憶の方もおられるのではないでしょうか? 私も、最初に知ったのは、NHKのドキュメンタリーでした(タイトルは忘れましたがNHKスペシャルの何かであったと思います)

全体としては、かなり良いことも書いてあり、一読の価値がある、なかなかいい作品であると思います。
この作品は、主に取り上げられえている、再構成されたカンブリア紀の生物達のことを記述してあるだけでなく、既存の我々素人が持っている、進化=進歩、又は高度な存在になっている,というステレオタイプな知識や捕らえ方が如何に意味の無いことであるかを説いておられて、この作家さんの主張が100%正しいとはいえないかもしれませんが、基本的な考えとしてはその通りであると私は思いました。

生物進化というものは結局はその時々の環境に適応していくと言ったもので、別に長期的な見通しや、最終的な目的などを持っているわけではないという辺りには非常に同意できます。 ましてやその最終段階が今の現代人であるというわけはないでしょう。 しかし、意外にみんなそういう感触をなんとなく持っているのではないでしょうか?

私は、作中のこの辺りの記述を読んでいて、自分が意識していた以上に、既成概念にとらわれているのを再度認識して、改めて認識をしなおしました。+反省を。。。。

これまで書いたのは、いい点であるのですが、この作品の作家さんの主張や記述にたいして、余り良くないと感じた点もいくつかあります。
まず、バージェス頁岩の化石を最初に発見した人は、ウォルコットさんと言う人で、この方は既存の生物分類の概念に合うように、これらの化石群を解釈されたそうです。
で、その何十年か後にこの作品で描かれている再検討、構成が行われ、”カンブリア紀の爆発”が認められるようになったわけですが、この作品では、わざわざ1章をさいて、このウォルコットさんという人の功罪を長々と書いてあります。 なんだか、わざわざウォルコットという人を悪役に仕立てて、それを再構成した科学者達(作者もその派に属している)の正当性を強調しているかのように私には思えて、ちょっと気に入りませんでした。

西洋人の作家さんなので、自分の主張が正しいと主張するためにあらゆる手段を講じたのかもしれませんが、ちょっとやりすぎのように感じましたし、ウォルコットさんも、事実を誤認したかもしれませんが、こんな風に書かれるほどまでのことなのか?と正直疑問でした。
また、これも西洋人の作家さんが書いた文章なので、結構、自分の主張をぐいぐい”正しいよ!!”と書いてあるような表現でもあるので、多少アクが強いように感じます。 
(そのあたりは多少差っぴいて読んでおかないといけないと思います)

もう一つ、注意が必要なのは、この作品自体がすでに10年以上前に書かれた作品で、この作品で取り上げたカンブリア紀の生物達に対する研究はそれ以後も継続されていて、今も新しい事実、解釈がどんどん出てきており、すでに様々に修正が施されているそうです。(訳者のあとがきによると)
この作品で書かれている結論は、すでに最終的な結論ではないわけで、ウォルコットさんの解釈が数十年後に大幅な変更が加えられたように、この作品で描かれた解釈も様々な新事実が出てくる度に見直しがされるものだと思います。

いくつか注意点や、良くないと感じたことも書いたので、あまり薦められない作品であるように感じられた方もおられるかもしれませんが、そんなことは無くて、上記の点は、読む上の注意点を書きたかったわけで、まあ留意点レベルの話と思います。
作品全体としては、様々に新知識や進化に関しての考え方を深めてくれる、なかなかいい内容だと思っています。 というわけで、興味のある方はいかがでしょう? でも結構ボリュームのある作品なので、じっくり取り組む必要ありです。
posted by 大阪下町オヤジ at 03:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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