「看護婦が見つめた人間が病むということ」,作:宮子あずさ,講談社文庫です。
実際に看護婦として長く勤務し(今も続けていらっしゃるようです)、様々な患者と接してこられた経験から人間が病気になったときの様々な心/治療/家族・社会とのかかわり等の問題について綴られているエッセイ作品。
テーマがテーマだけに、読んでいてリラックスできるとかそういったエッセイではありませんが、色々考えさせられるし、結構なるほどと思うこと/反省しなければと思うこと、、もあり、読んでなかなかよかったなぁと思った作品でした。
人間が、身体の病気でも、心の病気でも、病むと、これまで当たり前であったことが当たり前でなくなり、出来ていたことが出来なくなる、そういったところから、様々な自分自身も家族との関係もさまざま問題が噴出し、苦しむことになってしまいます。
幸せに暮らしていた人が急性の不治の病で身体的にも精神的にも暗転し、直らないまま亡くなられるエピソードや、死の病になっても家族との関係は結局修復しなかったなど、ドラマのようにはいかないやりきれない現実が色々語られています。
基本的には、そういう現実の中でも、何とか人に寛容に、または看護婦として真摯に接しようとされている著者も、時に徒労感や、苛立ちを感じることも、また正直に語られています。
全体からすると、こうすればいいという一つの固定された答えなど、生きていくということの中ではあるはずも無く、一人ひとり、生まれた環境、人間関係の中で、それぞれの答えを見つけるしかないものなのだと、いうことを改めて感じたというところでしょうか。。。
それと、あまり”こうでないといけない!”と自分の考えや一つの考えに固執しないことでしょうか? 状況を見て、周りを見て、適当に”じゃあこうしてみようかな・・”とふにゃりと変えてみる。 簡単ではありませんが、まあそんな心持を持っていることが大事なような気がしました。
特に印象に残っているのは、”人間は忘れることが出来るからこそ生き続けていられる”という言葉です。 これは本当にそうだなぁとしみじみ思いました。 昔の失敗や、恥をかいたことをいつまでも新鮮な記憶として思い続けたら、本当に人間どうにかなってしまいます。 そういったことをある程度忘れられるからこそ、ディテールが薄れるからこそ、人は何とか生きていける。 それが良いか悪いかは別ですが、それが現実と思います。
一読して損は無い作品かと思いました。 これを読んで、ちょっと周りに対して寛容な心持を持ってみようか?と思えたら、とてもいいことではないでしょうか?? そんなことを考えた作品でした。
2008年12月31日
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