2006年04月14日

本>SF 「火星人の方法」 作アイザック・アシモフ

最初の投稿として何について書こうかと考えたのですが、私にとって時間がたってもその魅力が色褪せない作品からと思いこの作品を選びました。
この「火星人の方法」は、ハヤカワ文庫のSF短編集「火星人の方法」の巻頭を飾る作品です。 タイトル:「火星人の方法」 作:アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫SFというものです。 本作含め4編の中短編が収録されています。

火星への殖民が始まってかなりの年月がたち、火星2世たちが火星社会の中核をなすようになり、既に3世、そして4世も生まれ始めているといったそんな時代。
火星植民地は、かなり自給自足の度合いを高めてはいるもののまだ完全に地球からの援助無しというわけには行かない状態。 そんな中、地球側で政治権力闘争が起こり、火星への資源援助を削減しようとする政治勢力が権力を拡大させていく。 彼らは、“水”、宇宙船の推進剤であり、鉱山や水耕栽培など植民地維持には欠かせない“水”の援助を打ち切ろうとします。 火星人は、地球以外からの水資源の確保に挑戦します。 地球の流儀ではない“火星人の方法”で。
ここからは、ネタバレが入ります。
ここで“火星人の方法”とは?ということなのですが、火星人である主人公は、土星の環を構成する隕石群に注目します。そのほとんどが氷、つまり水で出来ているのです、それを火星まで輸送することで水問題の解決を図ろうとします。 ではどうして地球人では無理で火星人なら可能なのか?
この小説の中では、宇宙飛行ハンドブックというものが登場しており、その中に宇宙船による飛行は6ヶ月が限界でそれ以上は人間の精神が持たないと規定されています。
しかし、それを規定したのは地球人の宇宙飛行士や科学者で、彼らにとっては確かに6ヶ月が宇宙飛行の限界なのです。
そして土星への航海は、一年以上かかるもので、その意味では不可能なものとされていたのです。
しかし、主人公はその地球人にとっての常識はもはや火星人には当てはまらないことに気がつきます。 地球人の生活環境は、空があり、空気があり、地面には草が生えていて、、、といったもので、宇宙船に乗り宇宙に出るということは地球人にとっては大きな環境の変化にさられるわけでそれゆえに地球人は6ヶ月以上連続して宇宙にいることが出来ないのです。 しかし火星人は?この小説の火星植民地は巨大な宇宙船と評してもいいような人工的な世界です。青い空も白い雲も存在しません。火星人にとっては、宇宙にいること、宇宙船に乗ることはむしろ“なんでもないこと”、“普通のこと”なのです。
だから、一年以上でも耐えられる、火星人なら土星に行けるのです。

この作品を読んで、私が感じたことは、新しい環境で真に暮らしていくのは、その環境に適応した感性を身につけた存在がその役割を担うことになると作者が言っているのではないかということです。
火星人は、宇宙や宇宙船で過ごすこと、そして宇宙空間で過ごすことに安らぎを感じ、宇宙空間の静寂に美を感じることができるという風に感性が変化した人間として描かれています。 本当に宇宙という新しい環境に適応し、宇宙に広がっていくのはこのように感性が宇宙という環境に適応した存在なのではないかということです。

この小説のラストでは、土星から火星に帰ってきた一人の宇宙船乗りが出迎えに来た家族の姿を見て隠し切れない喜びを表している描写で終わります。 つまり火星人も地球人とその精神のほとんどは変わる事はなく、妻や子供への情愛や仲間との友情などは同じく持っています。 ただ、ほんのわずかでありながらも決定的な違い、宇宙空間という場所にいることが“あたりまえ”となっている物とそうでないもの。それがおそらくこれからの未来、宇宙に踏み出して行けるかどうかの決定的な差になると作者は書いているような気がします。 おそらく将来、太陽系外惑星系を、そして更に遠く道を切り開いていくのは、地球人でなく火星人なのだということなのでしょう。
この作中に出てくる火星人の宇宙船乗りたちは、決して今のスペースシャトルの乗員のようにスマートでも、エリートでもありません。むしろ、粗野で、ちょっと下品なくらいに描かれています。愚痴もこぼすし悪態もつく普通の人です。 でも逆にそういった普通の人が普通に、地球人が作った既成概念を打ち破ることが出来たことが火星の未来が明るいことを暗示させているような気がしてなりません。

この作品は、初出が1955年と古い作品で、科学技術的考証という意味では少々古さを感じさせます。惑星テラフォーミングや軌道エレベーターなんてものも登場してきません。
しかし、環境による人間の感性の変化を描いているという点において不変の魅力を持っている作品であると思います。


posted by 大阪下町オヤジ at 15:22| Comment(0) | TrackBack(2) | 本の雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: テラフォーミングテラフォーミング(地球化、惑星改造)は、惑星を改造し人類の住める星にする改造のこと。とくに人の住めない惑星を地球に似た環境に造り変えることを言う。サイエンス・フィクション|SFの世界で..
Weblog: SF倶楽部(アニメからハードSFまで)
Tracked: 2006-05-13 08:07

桴瑰㨯⽷睷⹶慬牡猭灬慧攮湥琯扥慲搭捺慲
Excerpt: sf_欀刀剟䀀簠FX_彟䜴 
Weblog: 桴瑰㨯⽷睷⹶慬牡猭灬慧攮湥琯扥慲搭捺慲
Tracked: 2016-12-08 19:40

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